■ 犬質奪回についてプロジェクト見解 2001年5月21日

 
犬質奪回について、皆さんに謝罪しなくてはならない事があります。

このプロジェクトが始まって、犬舎にいる犬たちに里親さんが見つかり どんどん幸せになっていく一方で、私たちがいつも気にかけていた事の 一つにショップ(畜犬業者が経営していた山梨のペットショップ:以下 ショップ)に残った犬たちがいるという現実がありました。
この、ショップに残った犬たち=犬質についてですが、この度、弁護士や スタッフ達との子細な相談の結果、私たちは犬質奪還を諦めざるをえない 現状にあると言う結論に達しました。

経過報告にも発表しましたが、今回の保護について私たちの認識が 甘かった部分があります。それは、相手が今までさんざん取引相手を 騙してきた畜犬業者であるにも関わらず相手の書いた「全頭の所有権放棄」 の念書や言葉を信じた部分があったと言うことです。

当初、私たちはショップの閉鎖に伴いすべての犬の保護を頼むと言われ このプロジェクトを始めましたが、日を重ねるうちに相手の言うことが 変わっていきました。最初の念書では収容所で保護できる数が一杯だった ため、犬たちをショップにおいておくという認識で同意したつもりでした。
しかし、その後畜犬業者の態度が変化してきたため、 再度、今度は全犬放棄とショップの閉鎖という念書を取り付けました。 その時点で、ショップに残っていた犬たちが犬質となってしまった犬たちです。

当初から、私たちは、この畜犬業者の出資者であり、畜犬業者のために ショップを借り受け、畜犬業者に転貸(又貸し)している方と連絡を取って おり、その時の情報では12月1日には強制的に閉鎖できると聞いていました。
この畜犬業者は賃料を滞納していましたので それを一切支払わずに いつまでもいられるはずがないという常識的な感覚で対応していたのです。
閉鎖になれば犬たちは保護対象となるからです。
ところが、畜犬業者は賃料を払わないまま現在もショップに居座っています。
現在、この出資者と畜犬業者の間で賃料等の未払いに関する裁判が起こって います。しかしながら未だ終結の兆しは見えません。日本の法律では裁判の 結果が出ても強制執行までには時間がかかり、従って、結局畜犬業者は 賃料を払わないまま、ショップに居座り営業を続けているという現実を 生んでいるという訳です。
(更に、この畜犬業者は対外的には、既に経営を他者に委ね自らは退いた とまで主張しています。)

非常に残念ですが、あと数ヶ月間、もしくは、数年間、その畜犬業者と 裁判を行い戦うための体力は一般民間人である私達にはありません。
スタッフはすべて他に仕事を持っており、各自にそれぞれの生活があります。
現実に犬の世話をしながらそれらのことを同時に行うのは並大抵の事では ありません。
フルタイムで仕事を持たずに活動を行えば、人として普通に生活していく ことすら難しくなってしまいます。
人は何もしなくても生きているだけでお金がかかります。経費を何とか 賄えたとしても、保険や、自宅の家賃や自分の犬にかかる費用は個人的な ものです。それらは経費にはなりえません。長期化すればするほど脆弱に ならざるを得ないのです。
また、裁判を行うことで 結果的に現在保護できている犬たちまで微妙な 立場に追い込まなくてはならなくなる可能性も微弱ではありますが 考えうることです。

また、畜犬業者の言葉が変わり始めた時、私たちが手を引き 犬たちをまた あの酷い環境に戻したなら、犬質を手放さないといった畜犬業者を多少は 追いつめることができたかもしれません。しかし、私たちには それは 出来ませんでした。何故なら、もし私たちがそれをしていたなら、今、 里親さんの元で幸せに暮らしている犬たちの中からも 犠牲になる犬が 出ていたであろう事は簡単に想像が付きます。
今、そこにある笑顔は存在しない物だったかもしれないのです。

現在に至っては、その畜犬業者は最初に言っていたことを完全に翻し、 マスコミに対してもその場限りの詭弁を弄している状態です。
ですが真実は、犬舎にいた頃が想像できないほど生き生きとした犬たちの 表情が物語っています。
何とかリストにある全ての犬たちを助ける手段は無いものかと、必死に 探してみましたが、時間の経過による打撃は想像以上に大きくなる ばかりです。
せっかく心から祈ってくださり、犬質となっている子たちの救出を心待ちに してくださってる方々の気持ちを思うと、頭を下げることしかできない 自分たちが腹立たしいです。

ただ、救いは行政の方々が本気で協力してくださっていたことと、 犬たちの命の重さを一緒に考えてくださっていたことです。そして、 延べ300名以上のボランティアスタッフの皆さん、全国の皆さんの暖かい 支援と激励、「犬たちの表情を見れば千の詭弁も砕かれる」とおっしゃって くださった報道の方の真実を見る目、仕事を持ちながらも徹夜でネット作業に 取り組んでいる全国に散らばるスタッフ。この全ての人たちの暖かい手が つながれて、たくさんの犬たちが本当に素晴らしい家庭と巡りあうことが 出来ました。

残る数頭の犬たちの家庭を見つける事。それが、今の私たちにとって 最重要課題です。
一日も早く、この課題を解決できるよう できる限りの力を結集して臨んで 行く所存です。

こういったご報告をする事自体、非常に無念です。またご支援賜っております 皆さんからは身勝手であるとのご批判もあるかもしれません。
お叱りは受ける覚悟ですが、どうぞ今後もご理解ご協力頂けましたら、 大変幸甚です。
どうぞ、よろしくお願い申し上げます。