::: MENU :::  TOPへ
保護した経緯
シェパード保護活動目的
署名協力のお礼
サイト運営終了の挨拶
経過報告(2003.12.10)

どうか耳を澄ましてください。
そして、自分にできる動きを聞いてください・・

 多くの方々の暖かい支援を受け、4頭の顔が明らかに変わってきました。
犬たちは不思議です。人の思いを真っ直ぐに受け取ります。ですから、ひとりでも多くの人が幸あれという強い思いを投げかけるだけで、彼らは身体の中から輝いてくるのです。

 この犬たちを保護してから、多くの情報が寄せられました。また耳番号からも情報が分かりました。そして多くの事実が判明しました。それをここで皆さんにお知らせしたいと思います。


彼らは多いときで約20頭のシェパードたちと一緒に犬舎で飼育されていた、ある繁殖者の飼育犬でした。そのシェパードたちは、賞狙い、繁殖犬、売れない犬に犬舎を分けられ、飼育されていました。

その繁殖者は、これまで何十年となくシェパードを愛好し、200頭を超えるシェパードの繁殖をしてきた趣味の繁殖者でした。彼を知る人は誰もが、彼をシェパードに造詣の深い、シェパードを深く愛する人だと思っていました。そう。彼自身を含めて。
彼の繁殖するシェパードたちは、PD、JSVなどの展覧会等で多くの賞を獲得し、良血統と呼ばれていました。

元飼い主の犬舎の頃 昨年からその繁殖者は身体に不調をきたし、以前のように充分な世話ができにくくなっていました。
そして今年になって犬を減らすことを決心し、友人を通じてインターネット上に「いらない犬7頭」の里親募集を出しました。
ですが、犬たちは成犬で犬舎からほとんど出たこともないという社会性のない生育状態であり、また充分な世話ができてないためひどく汚れていました。そんな状態ですので、譲渡は難航しました。

そして11月の中旬、突然の生活上の事故により、繁殖者は入院することになってしまったのです。
残された家人は、病院へ介護のために日参、仕事、家事で犬の世話どころではありませんでした。
そして繁殖者は前述の友人に相談しました。例の「いらない7頭」の件でした。

繁殖者は、それまでの経験から「成犬の譲渡は不幸な結果を招くことが多いので、やはり処分してしまおう」と決心したのです。ただ幸いにも含まれていた1頭は生後半年の仔犬だったため、事前に貰い手が見つかりました。

その週末、「いらない犬6頭」が東京都の動物管理センターに処分のために運び込まれました。

さて、各地方に、それぞれ保護活動をしているボランティアが存在しています。
中には「保健所の成犬・ネコの譲渡を推進する会」等のように動物管理センターで処分期限の来た犬やネコを、1頭でも多く助けることを目的として設立されている団体もあります。今回、このシェパードたちを保護できたのも、そうした会のひとつ「動物生命尊重の会」のおかげでした。

シェパードたちの情報が入り、彼らの状態が劣悪であることを聞き及び、半ば諦めの中で仲間に相談しました。成犬の中でもシェパードは難しいだろうという声は多かったです。ですが、耳が切られていること、異様な削痩状態であることなどを知るにつれ、放って置けないと意見が一致し引き出すことに決定しました。補足説明(補足説明)

動物管理センターで彼らを見たとき、正直、早まったかもしれないと思いました。
状態がましだと判断された1頭は前日出されていましたので、残った5頭の状態は押して知るべしです。
酷い水下痢を起こしているハニー(お母さん)。その下痢を、先を争って舐めているほかの犬たち。

でも一番状態が悪かったのはケンタロウでした。ケンタロウの身体は、遠目にも異様に削痩し、筋肉のない足は踏ん張りが利かず、よろけていました。下半身を中心に、鎧のように糞尿がこびりつき、アルマジロのような状態でした。 それでもハニー(お母さん)にジャレかかり、こっぴどく仕返しされ傷だらけでした。

エンジェルは、ケンタロウと同じく、他の犬たちからいじめられていました。片耳が折れて倒れたままの不安そうな顔をしたコでした。汚れ方も酷く、オドオドしていました。

ピノとエナは、最初は見分けがつきませんでした。どちらの右耳もスッパリと切れており(後によく見てみると刃物で切ったとしか思えないような切り口です)、同じように小さめで、同じようにアルマジロでした。ただ、ケンタロウより多少はましかなという程度です。

そしてハニー(お母さん)は、エナとピノを従えているように振る舞っていました。瞳の奥には、不安と焦燥が見て取れました。人間に向かって、警戒しているのはハニーだけでした。ただ見た目的には、一番マシな状態でした。

とにかくケンタロウとエンジェルを早く離してやらないと、もっとケガをしてしまうと思い、まずケンタロウを出すことにしました。そばで見ると、改めて状態の悪さに驚きました。

  目に沁みるほどの悪臭
   まばらに生えた被毛
    幾重にもこびりついてガチガチに固まっている糞尿
     全ての骨を数えられそうな削痩
      筋肉がないためくっついた膝とかかと…。


そしてこちらを見る目には光がなく、ドロンとしていました。取り合えず用意したクレートに入れ、シャンプーのための場所に向かいました。車で30分ほどの場所でしたが、窓を全開にしているにも関わらず、ほとんど車酔いしてしまうほどの臭いでした。待ち受けていた保護仲間にケンタロウを引き渡すと、次のコを連れに引き返しました。

次はやはりいじめられていたエンジェルでした。そうやって、3往復で全員を引き出し終わりました。
ひとりが車で運搬している間、他の仲間がシャンプーをしました。
お湯をかけるだけで、足元に泡が立ちました。身体中に染み込んだアンモニアのせいでした。今まで劣悪な状態にあった繁殖犬の保護活動をしたことがありましたが、ここまで酷く汚れきった犬を洗ったのは初めてでした。

犬たちは、おそらく初めての経験だったのでしょう。多少驚いた様子はありましたが、ピノとハニーを除き、ほとんどされるがままの状態でした。ピノとハニーは、必死で抵抗しました。と言っても、逃げようと必死だっただけですが。

その後、都内の某協力獣医のもとに全員を運びました。
そこには、事前に集まってくださっていた協力者の方々が待っていました。現在、ケンタロウ、ピノの一時預かりケアを担当してくださっているおふたりです。彼らは有資格訓練士です。
洗ったとは言え、酷い悪臭を放つ状態の悪いシェパたちを見て、当初ふたりは面食らった様子でした。確かに訓練士さんであれば、こんな状態の犬をなぜ…と思うでしょう。
以前、知り合いの訓練士の方から、こんな話を聞いたことがあります。
訓練士や犬猫に関わる仕事をしている人は、捨て犬(猫)に関しては常々「拾う人がいるから捨てる奴が出てくる」という考え方で、自分から進んでレスキューに参加する方ではありません…。
胸糞の悪くなる話ですが、業界の裏を知ってしまうと・・・正直、「キリがない」のです。悲しい現実ですが。(中略)
(業者間では、ちょっと裏を覗けば「ポチ」だ、「カス」だ、「いらねー」だの言われて処分犬として出される、又はそれと同等の扱い(実験送り)にされる・・・といった犬達が大勢居ます……。
現実には、見えないところで多くの犬たちが、悲惨な状態のまま命を落としているわけです。そういう意味で言うなら、この犬たちは幸せです。実際、今回、繁殖者の方が、犬たちを行政で処分しようと思ったおかげで、こうした事実があることがわかったのです。

もし、これが自らの手で安楽死していたり、実験送りにしていたら、誰も知らないままで終わっていたのです。そう。誰もエナやピノ、ケンタロウやハニーの笑顔を知ることもなかったのです。

とにかく有志たちによって、センターから引き出した限り、環境や体調を整え、健康状態を把握し、彼らが行くと決まっているはずの終の棲家を引き合わせ、活動を終了するまで頑張ることになりました。


 私たちは保護活動を生業としているわけではありません。皆さん同様、ただの犬好きです。
 たまたま縁あって、彼らの縁組の手伝いをすることになっただけです。
 そして、このサイトを訪れ、彼らの幸福を望んでおいでの皆さんも同じです。
 私たち、ひとりひとりではたいしたことはできません。
 ですが、こうして犬の底力を見せ変化している彼らに対し、人間の底力を見せてやりたいと思います。



彼らは、他の多くの犬たち同様、人間を幸せにする能力を持って生まれてきた犬たちです。
その能力を発揮する家庭が、どこかで待っているはずなのです。
彼ら犬たちの声を聞くことができるのは、ドリトル先生だけではありません。
こうして彼らのために集まった人々は、あなたも含めまぎれもなく彼らの言葉に呼ばれてきた者達です。 この特権を持った人間だけに許される犬たちとの共同作業が、この終の棲家探しなのです。

どうか耳を澄ましてください。そして、自分にできる動きを聞いてください。
あなたは犬たちから選ばれて、ここを見ているのですから。

2003年12月10日